余計な情報で乱される襟元から

君が取り出した金平糖の味

風鈴が鳴っている

どこかから焼き鳥の匂いがする

すべて記憶の中で

満ちた潮にのまれていく

海の中から

見上げた夕焼けと花火も

くらげと一緒に落ちていく

深い海の底には

赤い空とパチパチ撥ねる火花が

降り積もって

冷えるのを待つ

くらげの呻きは聞こえず

ただ化学反応を反射して光るので

カモメやチドリが

波間をぱしゃぱしゃと渡っていく

彼らの目がシャッターを押し

映像記録が宇宙ステーションに送られて

ああ今北半球は夏なのかと

季節を置いていった飛行士が

半回転しながら焼き鳥をたべてる

華奢になってく背骨のカーブを撫でていってよ

傷にならない程度の下衆さで

嚥下する 経過する

チャンクスコーンの隠し場所を見破られて

ああもうここにはいられないや

足の裏に貼りついたばらの棘と歩いて

膝で開くひまわり

種をついばんでいくスズメには

蝶ネクタイをあげる

勲章に 印象に 干渉

十時の時計に間に合わないで

頸動脈にキスをされる

脈打っていますか本当に本当にそこで

私の血は

焦りを運んでいきました

心臓をぐるりと回りました

そうやって感情はめぐるばかりで

どこにも逃げていかないんでしょう

スズメは咥えていかないでしょう

ひまわりの種はこぼれずに

足元はぬかるんだまま

待っているのは

鉄砲水か 虹か

どちらなんでしょうね

肩甲骨の切れ間からのぞく

悟ったような獣の目

理知的であろうとするほど

本能の炎が薄暗く燃え広がる

正解はモグラの穴を転がり

夜明けのミミズの歌を待っている

砂糖だらけのサンダルを置いて

アリは雲に巣を作る

横断歩道から逃げていくゾウの群れ

リクガメの甲羅を夕立が洗っていく

ラクダのまつげ

ホワイトタイガーの青い目

ツバメが落としたのは雨の匂い

夏の最中

明乎 akiko

詩を書くこと。朗読。